EP4.まさかの経営略奪!?〜どうなる、おじさん!〜
『あいつに店、ぜ〜んぶ持って行かれてなぁ。』
そう言っていたおじさんの声には元気と活気がなかった。
僕は一体誰と会話しているのだろう?
威勢のいい声に嗄れていてもしっかりとしたトーンで話すおじさんの人柄は忘れようにも忘れさせないものがあった。
端的に言うとおじさんは経営権や会社のお金もほとんどその人に持って行かれたらしい。
おじさんはもともと『会長』で、その泥棒は『社長』だった。
僕の元にはその情報しかなかったのでその時、あまり詳しくは分からなかった。
なんだ、これは。
状況がしばらく読み込めなかった自分だったが、一つ疑問に思った。
『車はどこになおしに行けばいい?そして販売場所はどうなる?』
その二つを早速正気を失ったおじさんに聞いてみる。
するとこんな答えが返ってきた。
『いやあ、車は直す工場がまだ残ってるからそっちでやるけど、販売場所はごめんなぁ、今店自体がなくてなぁ。』
おじさんなりの必死のお客さんの守り方だった。
聞くと、泥棒社長さんの元にも当然お客さんがいるのだがそのお客さんは社長さんと連絡が取れなくなって会長であるおじさんに全部責任が回ってきたらしい。
恐ろしい話だ。もし自分だったらと思うと破産申告してしまう。
そうしてすっかり元気が無くなってしまったおじさんとの電話を切った。
う〜ん、これからどうしよう。
そんなことしか思っていなかった僕は、手元にあったコーヒーをブルブル震えながら置いた。
販売場所が確保できなかった以上、出店はできない。収入もない。世間的に見れば、看板だけ掲げた「無職」である。
僕は無職という響きに心地を覚えることができなかった。というか、できるわけない。
そして数ヶ月。
ようやく販売車が完成した。色々な部品や保険に入り、カスタマイズしまくったこだわりの販売車だった。
合計金額が、、、
100万
しっかりとした借金だった。100万の借金どころか普段はコンビニの買い物に1000円使うことすら躊躇する僕なのに、だ。
しばらくメモ帳に書かれた『借金総額100万円』の文字から目を話すことはできなかった。
『それから数ヶ月』
1人で販売場所を確保すべく、四苦八苦した。
ようやく確保した販売場所は2つ。たったの二つだった。
しかしその二つの場所には感謝しかない。
そこでようやく移動販売車『TUBE』の活動が始まるのであった。
次回『移動販売車TUBE稼働!〜待ち受ける大企業の社長のヘッドハンティング!?』